生涯賃金が上がる?「ベア」について

ベアとは

毎年メーデーの頃になると必ず話題になるのが「ベア」という言葉です。
「ベア」と聞くとまるで「Bear(クマ)」のように思うかもしれませんが、実はもっと単純な「ベースアップ」の略です。

戦後日本の一般的な企業では終身雇用制とともに年功序列制度によって給与体系が定められていたことから、「定期昇給(定昇)」が毎年行われるのが通例でした。
定昇ともう一つ日本企業的賃金制度となっているのが「ベア」で、これは定昇とは別に賃金全体を底上げするという意味で使われます。

メーデーの頃によく聞かれるのは、企業に設置されている労働組合(労組)が経営側と毎年賃金交渉をするのがこの時期であることから、その交渉の結果が5月頃に公表されることになっています。
ちなみにこの交渉は毎年2~3月頃から始められるのが通例です(春季労使交渉)。

ただ、この労使交渉はすべての企業が個別に行うというわけではなく、日本において最大の影響力のある自動車産業や電気系産業が行った交渉内容をもとに、他の企業がそれに追随するという形になっています。
毎年決まった時期にベアが発表されるのもそうした他の企業への影響が高いためであり、ある意味その結果が日本経済の状況を示すものということにもなるのです。
さらに言えば公務員の給与も、民間企業の賃金動向をもとに基準が決められることにもなっています。

定昇とベアは別途行われる賃金交渉ということになっており、ベアアップが達成された場合すべての従業員が昇給の対象となります。
ベアアップがあることで当然定昇での給与額も大きくなります。
企業側にしてみれば当然それに伴い人件費が大幅にアップすることになりますので、交渉には慎重になるところでしょう。

実施されるメリット

ベアを決めるための交渉が行われる最大のメリットは、当然従業員にとって受けられる給与額が高くなるということでしょう。
給与の額については個別に交渉をしようとすると、どうしても他の従業員との兼ね合いもあり、なかなかうまく交渉を進めることができません。

欧米など個人主義が一般的な感覚であればまた異なると思いますが、定昇など個人の能力にかかわらず一律に給与が上がるという規則で給与が定められている場所では、一人だけ高い給与にしてほしいという要望を持ちかけても通ることはまずないでしょう。

ベアアップがあることで従業員全体が公平に給与がアップとなりますので、企業内の労働組合に属する人全員がくまなく利益を得ることができます。
企業としても個別に能力を査定することよりも、その年の業績から上げることができる給与幅を提示することができるメリットがあるのです。

ただ景気が後退局面になると、ベアがダウンすることも起こりえます。
その場合は皆平等に給与が下がることになってしまうでしょう。